でもまあそれでも失業率は4パーセントちょいなんだけどね。アメリカと違い調査に「家事手伝い」がある分、女性の失業者が潜在的に常に隠されている日本の統計を他の国と比べるのはかなり難しい。
日本での実態は日本に住んでいる人しか実感できない、と言うのが実際のところなんでしょう。
それにしても経営者が「会社を守るために」と公言して労働者を切ったのは今回が初めてではないとは言え、労働者の生活をあっという間に崩壊させるような雇用体系って「後先を考えず身を粉にして単純作業に従事する」人間にとっては死ねと言っているようなものですね。
今時そんな人が、と言うかもしれませんが、実際問題人間が集まれば5人に一人はこの手にタイプの人がいるから会社と言うものは成り立つのであって(学校で班を作ったら必ず一人はやたら張り切る人がいたでしょ?同じ理屈なんです)、ところがこういう人って非常に不器用に出来ていて、今回のような「そういうこともある」と言う状況には非常に弱いんだよね。
結局日本の終身雇用制という奴はこういう「人のために生きることが生きがいな人を生かすスペースを保つため」に存在していたのであって、実はこれが日本の高度成長期を支えていたのだが、残念ながら不況に陥ったときに「ワークシェアリング」と言う高度な次元の概念が日本に持ち込まれなかった(あの時代はそれこそイチローが大嫌いな「根性」が大流行している時代でした。毎日しなくてはいけないことをきちんとこなすことは根性とはまた違った属性の徳なんだな。)ため、日本の終身雇用制はあえなく崩壊することとなる。歴史のお話ですね。
最近の「会社を守るため」と言う論理は村上春樹氏の「卵と壁のお話」にたとえるのならば「会社は壁で労働者は卵、卵に於ける壁の内側か外側かの選別基準は正規に雇われたものか派遣で雇われたものか」なんだよね。
本来そうであってはいけないのだけれど、会社の経営者が「会社を守るため」などと公言するとこの方程式は成立してしまう。
会社と言うものは実は一人一人の労働者の生活と人生に責任を持つものでなくてはならないんだよね。正社員と派遣社員が同一労働であるにもかかわらず違った待遇、違った賃金しかもらえていないのは、結局現在の日本の法律は会社に「選民思想」の選択肢を与えている、と言うことなんだな。
つまり平たく言うと今の法律で言うと「正社員の方が派遣社員より偉い」んです。なぜなら正社員は「選ばれたもの」だから。そしてそれを認めているのは法律なのだ。
まあ、面白いと言えば面白い、と言ったらこれはやっぱり不謹慎なんだろうか。それにしても製造業への派遣を認めている先進国は僕は日本以外ではグレートプリテンぐらいしか知らない。同じ島国で名目上とは言え王制を維持している所まで似ている。やっぱり思考の行き着く先も似るわけがあるのだろう。確かに存在する「実は根拠があやふやな(たとえば大切な友人の立派な息子とか、親族ではなくても気に入ったとか。これらの直観は大事だがすべてではない)選民の癖」は、歴史から見ても治らないとだと思う。
会社の雇用形態に対する不信感は労働の質の低下を招かないのか。それと同時に確かに20代、30代に存在する「下流志向」を作り出している現在の国の状況を今現在国を引っ張ってい校と思っている人達はどれほど理解しているだろうか。蹴落としたものを見下せばすむ時代はとうの昔に終わったと言うことを理解して、国をひとつにするヴィジョンをもって活動している政治家はどれほどいるだろうか。
言われずとも、がけ崩れが起これば多くの人はそれに適応して人は暮らすだろう。
ただ、残念なことに今回のがけ崩れで「堅い国、にっぽん」と言う幻想は世界において同じく崩れようとしている。時計の針は逆には戻らない。昔あった美しいものを懐かしむような視線が上の人たちに見えるようでは(正直小泉さんがもう一回出るといってそれで支持する人たちの政治信念って一体何なのかと思う。他にいないから皆群がるしかないだろうが。今回郵政問題を穿り返して自民党が真っ二つになったら確実に自民党は選挙で負けると思う。あくまで私見だが。)これからの方向性が見えないと騒がれても仕方ないのではないか。
北米やオーストラリアだけでなく日本でも、受粉用のミツバチが「同一種類の栄養ばかり取らされる作業に飽きて」自我崩壊して巣を放棄するCCDと言う病気が流行っているらしい。
右から左に物を移す作業ばかりに人を特化させてそこに縛り付けるのが当たり前だと経営している側が思っていたら、いつか人にもミツバチと同じようなことが起こるのではないだろうか。むしろ彼らはそれを恐れないのか。
まあ、ロングスパンではこういうことは危惧していても、それが今興ると思っている偉い人たちっていないものだ。だったら偉い人たちが偉い根拠って一体何かというと、本当はそれは終わって結果を見てから言えることであって誰が本当に偉いかは結果を見ないと分からないね。
長々と書いたけれど、一言で言うのなら(言えるなら一言で言えよと自分に突っ込む。ここまで書いて消すのも癪なので)結局現状をひとつのマニュアルで括るのは無理なので、つまるところ経営者一人一人の手腕が今試されているのだと思います。(くわ!そんなのみんな分かっているよな)
故あって切られたものもあれば、忠臣蔵を起こしても仕方ないような切られかたをしたものもいただろう。それが「法律で認められていた」か否かはこの際実はどうでも良くて、果たしてそれが人としてのモラルに耐えうるものだったかどうかは働いている人たちが見ている。
ここにマスコミの限界もある。いや、だって、これは一般論としても離せないし、一人一人を取り上げると今度は偏向報道になるから。(今時投書も色々うるさいだろう。きっとみんな僕みたいな人たち。ああいやだ。)
聖人君子になれとは言わない。
ただ、間違っても「会社を守るため」、そんな理由で経営者は労働者を切ってはいけないんですよ。
それを分かっている経営者が存外少ない。
それは今回率直に思ったことでした。
驚きはしない。結局法律に守られたことだったから。ただ、その法律自体の根拠は、内部からも一時自己批判が出て、むしろ自己批判をした人が糾弾されたことを見ても、作ったほうでも「これ、人権侵害じゃね?」と思っている人がいたことは、まだ日本にも自浄能力が完全に消え去ったわけではないことに希望を持たせた。
・・・なーんて、結局色々話されているのだろうけど何一つ解決したような気分にさせてくれないことは、結局現状に対する特効薬なんて存在しないと言う事実を僕らに突きつける。
結局本当の意味で「今」否定されようとしているのは「アメリカ型資本主義経済」なんだよね。なんと言っても大統領自身が否定しにかかっているのだから。
これが成功しようと失敗しようと、間違いなく僕らが今生きている時代は歴史のターニングポイントですね。
これが時代のうねりだ。
歴史で見るとワクワクするが、渦中にいるとただただもまれる一小市民。
現実は、厳しい。