フム。コペルニクス的転回ですな。
僕はピアノはここまでほぼ独学でやってきたのですが、これ、僕としてはものの考え方が180度変わるようなものでした。
考えて見ると、自分がこうやってパソコンのキーボードを打っているとき、手首は当然のように下に言っているわけです。机についています。
これは指先の力を使わずに打鍵できるだからなんですよね。今まで考えたこともなかったですが、打つときに体の動きとしては、手首が更に沈み込んで腕の重さを使ってキーボードを打っている訳。だから、スピードが速くなると腕が弾むんですよね。
何で同じ理屈をピアノに持ち込もうとは思わなかったのだろうか。ここが自分でも不思議なのです。
子供の時に習ったときに「手首は柔らかく」とか「もっとリラックスして弾むように」とか言われた事はあったのですが、じゃあ具体的に手首を柔らかくするって、リラックスするってどういうことかについては、結局よく分からないままだったのです。
ぶっちゃけると、世の中のピアノを習った人の9分9厘がそうなのだと思います。教えている本院は出来ているので、何が原因で柔らかい音が出せないのかが分からない。
そしてどうやら、天性の勘だけでやっていると、今の時代のコンクールで勝つのは難しいみたいですね。つまり勘が良い人達が、こうしたロリンのピアノコースのような教材を使って、更にその技術を研ぎ澄ましているので、どうしても日本人に手首の硬さが目立つ、と言う事になっているようです。
いや、前々から「何で欧米のピアニストと日本人はこうも弾き方が違うのか」とは思ってたんですけどね。使っている教材が違うのだから当たり前と言って良いのでしょう。
因みにこの教材、10年くらい前から日本に紹介されていたみたいですね。
期待しないで欲しいのは、これをやり始めて1週間くらいで劇的に演奏が変わると言う事は絶対に無いです。
才能のある人達を除いて、ほとんどの人は「えー?こんなに手首を使うの?」という驚きから始まることがほとんどでしょう。
12の「基礎テクニック」なるものがあるのですが、どれも実施自体は簡単です。本買って、Youtubeでpianolesson21さんが紹介しているページに飛べば、彼女がロリン・ピアノ・コースという名前でアップしている動画を見るとイメージがハッキリと湧くと思います。要は「指先ではなく手首を使って腕の重さで弾くのだ」と言う事を理性で分かれば充分です。あとは練習している内に自分で判断出来るようになると思います。
そう、自習教材としてもこれほど良くできているものは他に無いと僕は断言しちゃいます。いや、あるのかも知れませんが、今市販されているなかで「手首の柔らかさ」についてこれほど語っている教本は他に無いと思う。
驚くことに、手首を柔らかく使う事を意識すると、体全体が使えるようになってくるんですよね。
「テクニック」という本と一緒に「レパートリー」という本当にごくごく簡単な曲集がありまして、そちらに基礎テクニックで勉強した手首棟での使い方を実施していくわけですが。
以前は3曲めの「バルトーク風の簡単な曲」(もちろんこんな題ではない)とか、弾くのに途方に暮れていたのですが(簡単な割にどうすればよいのか分からない。由紀さおりが歌う赤とんぼと一般人が歌うあかとんぼはちがう、と言えば分かりやすいだろうか)、その間を埋めてくれるのが手首の使い方だったわけです。
余りに体の使い方がちがいすぎて、こんな簡単な曲なのにテンポが上げられない、と驚愕の思いで練習しています。この体の使い方をマスターした上でツェルニー100番とか弾くと、恐らく全く違った物になってしまうのだろうな、と。
欧米のピアニストの多くが「ツェルニー30番を引きこなせるのならばあなたはベートーヴェンは何でも弾けるはず」とよく云いますが、そりゃ前提が違いすぎる。
メトロノームに合わせて弾くだけなのではなく、こんなに全身を使った上で弾けるようになれば、という話をしているのだから。
むろん、理由はこれだけではないのですが、近年、日本のピアニストがコンクールで勝てなくなっている原因の一端を見たような気がします。僕は分野が違いますが、この弾き方は「歌える」という感触が強くあります。
簡単な曲を歌うように弾いているピアニストの真似をして遊ぶ(例えばギロックの子供のためのアルバムとか)らしいですが、人の真似をしていても限界はある(つまり音源がないと弾けない、と言う状態になる)ので、自分の音を出してみたい!と言うかつてツェルニー100番で挫折した僕のような人(40番くらいまで一応やって、うまくならなかったんだよね)は、暇があったら手を伸ばしてみると良いと思います。
一日1時間時間が取れれば、1年後には相当違ったものになりますよ。まだ1週間足らずですが、本当に天と地がひっくり返るくらい概念が変わってきます。
僕はピアノという楽器が「自分でも」こんなに優しい音を「いつでも」出せる楽器だと、今まで知りませんでした。
全ての問題は手首にあります。このアホみたいな12の基礎テクニック、実はプロでもいつでも確かめて、高めて、より繊細にするためには欠かせない、凄く有用なものであると思いますね。