内定を取り消す際に「自己都合で辞退と書け」と迫るのは恐喝、もしくは詐欺行為ですよー。内定を出してしまった時点ですでに彼は「採用」されてしまっており、法律的には社員と同じレベルで守られているので、これらの行為をした後に内定していた学生に訴えられたら会社がアウトですよー。
民事的には勿論、刑事的にもそうです。そんな分かりやすいこと言って、裁判になったらかなり高い確率で負けるよ?
・・・いまどきの学生はこういう局地的な法律をインターネットで意見交換しあってすぐに情報として手に入れるので、これまでやってきたような形で抜けることは許されなくなっている。こうした社会の進化についていけない会社は結局のところつぶれて行くわけでして、むしろ学生たちはこれらの会社に就職できなかったことを喜ぶべきである。
というか、多くの会社が法律的に「内定した学生の権利は正社員と同等」ということを認知していないのが、日本の一流企業に勤めてらっしゃる人事の人の法律の理解度の深さを示しており、感銘に値するね。どうしてこれで今までやってこれたかというと、日本ではそれだけ解雇が少なかった、ということなんだけど。なんで過去形なのかは言うまでもないですねハイ。
契約社員という制度もまだまだ社員にとって明らかに不利(アメリカやEUでは契約社員を五年続けると正社員と同等の権利が得られるが、とりあえず僕の知る限り日本は相変わらず10年である。日本中の准教授と呼ばれる人たちが明日は知れないと語り続けるのはたいていの場合この事実を就職した後に知るからだね。ほとんどの准教授は1年契約、長くても5年だから。おそらく日本ではこの問題は解消されない。そもそもそこにどういう問題点があるのか当事者以外は知ろうと思わないから。この国がどうにか保たれてきた理由は、そういう我関せずといった態度をあえてきめ込むと決めた国民全体の空気にも起因する。いわゆる空気読める、という奴ですな。みりゃわかるがそれはほめるものでは決して無い。知ってなけりゃ生きていくのが辛いことだ。それだけ。)です。
今回は派遣法が起こすであろうと言われた問題がすべて誰もが目の当たりにできる状態になってしまい、これだけの「もともと仕事していて仕事がなくなった人たち」を攻撃するのは「ニート」に区分される人たちとは違う、とマスコミも主張していたけれど、「いつか将来の見通しが立たなくなる」という点においては実は一致してるんだよね。
これが僕が一貫して「ニート」という言葉が危険だ、と言い続けてきた理由だったんだけどね。
イギリスや日本のような島国社会がしてしまう言葉の選択の間違いは、外に対してはあまり目立たない差別を起こす。事実イギリスではneetという言葉はもはや差別用語であり危険であるために使われない。結局のところ海外から移住してきて永住権を持つ仕事のない黒人たちを差別することを正当化する言葉として使われ続けて破裂した言葉であることを知っている人は日本には少ない。イギリス人の多くはブレアは馬鹿野郎だと言っている。それは知っておいた方が良い。
国の偉い人がカテゴリーを作って非難することが差別につながる(だから麻生さんが医者全体を愚弄したときに医師会が猛反発したんだよね。あのまま発言を撤回しなかったら医師会は「麻生一族とその息のかかる人間を今後病院で一切受け入れない」というところまでの勢いだったと思うよ。)、ということを彼が知らなかったのは、彼が歴史をきちんと勉強していなかったからで、歴史を勉強することに意味がないという人間は必ずこういう間違いを犯す。ブレアがイラクに関して間違いを犯したことは、彼の発言を見ても、「必然」だったと今となってはすべてのイギリス人が思っていることだね。あまりにも勉強不足。イギリスの首相になるのなら、プルタークぐらい読まないとやっぱり駄目なんですよ。「歴史は繰り返される」ことを実感するためにね。
とりあえず、会社が勉強すべきなのは、「正社員の権利ってのはびっくりするぐらい色々守られている」ということですね。会社の偉い人たちは「会社に勤める覚悟」を訓示する人は多いけれど、それと同時に「社員を正式に雇う覚悟」についても社内で大いに訓示した方が良いと思う。でないと「内定を学生都合で取り消させるのには恐喝で十分」という時代錯誤な勘違いをした社員が会社をつぶしてしまうだろう。
日本もついに、完全に訴訟社会に入ったということだ。アメリカはその時点から弁護士の数を10倍にして対応したが、日本は裁判員制度という「殺人限定」の方でしかまだ動いていない。個人のプライバシーを理由にマスコミが実名報道を出来ない雇用問題の訴訟に踏み切る労働者はおそらくこれから後を絶たない。会社が和解に応じないとすれば、裁判所はパンクするんじゃないのか。
もっともこの論理の流れに従って、おそらく多くの会社が和解に応じることになるだろう。しなければ、この国は大変なことになるから。その非難を背負って今後日本で会社を続けるのは難しい。それは彼らも分かっていることであり、あとはいかに自分たち(断っていおくと、会社、ね)にとって有利な条件にするかということだけである。ここまで分かってやっている条件交渉ですから、労働者にとって不利なのは一目瞭然なんだよね。戦後ずっと繰り返されてきた光景と重なる。
ちょっと頭のいい人に限ってニートになってしまうのは、こうした構図がはっきりと見えるからなんだよね。本当はそこから突きぬけて「でも君はタフにならないと生きていけないし、変わらない日常生活をすることが君の生きている意味なんだ」(自我に対する客観的立場の恒常的保持、自己に対する二人称を取る態度)を持つ村上春樹的な精神状態になる人が今後増えていかないと、社会は支えられなくなってくるだろう。
ところで今の政府って、本当に機能しているんでしょうか?いや、行政システム自体は立派に機能しているし、社会システムも円滑なんだけどね。壊れてしまったところの修復機能、という意味で、ね。
ギリシャのようなことが起こらないのは、日本が恥の文化であり、耐えることを美徳としているからにすぎない。(知っていると思いますが、日本の失業率が低いのは女の子が仕事がない場合、無職と記入せず「家事手伝い」とするからです。それをしなければ僕の見立てでは少なくともアメリカと同じ水準まではいっていると思います。)過ぎないと言っても、日本が近代国家において極東であるにもかかわらず相も変わらず世界経済の中心を保てているのは実はここに起因しているのだから、ほかの国にとっては垂涎ものの美徳なのですが。
それでももしズルズルと、ヨーロッパのように若者の失業率が20パーセントを超えるところまで行ったら事実上国家がが成立しなくなるだろうという危機感は、やっぱり上の人には持ってほしいと思います。国を一つの会社として見たら、働かない人が20パーセントを超えたらその会社が終わりだというのはすべての社長さんが分かることでしょ?
日本の政治家さんたちが基本的にのんきなのは、表面的にはこの国ではあまりことが起こらないと高を括っているからだ。僕も日本人はやたら同族意識が高く、自国民を守ろうとする意識がすごく強いので、よほどのことがない限り国が転覆するようなことは起こらないとも思う。
しかし、それにしても、あんまりなまでに、反応が、鈍いねえ。
それが長所でもあり短所でもあることが分かっているが故、「ああ、やっぱりこうなるのね」と思ったところで、むしろ「こんな日本で良かったね」と内田樹さんが言った言葉が僕の頭に冷水をかける。むしろこんなでも機能している日本社会を見ると、機能していない国にずっと住んでいたが故に、これで機能する日本人ブラーヴォ!と叫びたくなるね。感嘆をこめて、多少あきれた面持で。
でも、法律違反は、ナシね。
刑務所に行きたくなければ、内定辞退の強要などは、しない方が良いですよ。
同じことが日本IBMにも言えますな。
彼らは自分たちのやっていることが犯罪すれすれであることは分かっていた。
それゆえにその罪は、ひょっとするとどっかの会社の間抜けな人事課長(どこら辺が間抜けかというと、指示していた人たちはそれが犯罪と知っていたが、彼らはおそらくそれが犯罪であることを知らなかったという、ダブルバインドの虚偽を見抜けないその頭脳)よりも、はるかに重いのかも知れない。
恐喝は、ダメですよ?肩叩きはやんわりとアメとムチでやるものであって「君なら別の会社の方が」などと、根拠のない言葉で社員にとって不利になる条件で放り出すなど、ほとんど犯罪行為であることを知っていてやっているあたり、たちが悪いね。
創ってたパソコン思い出しても、本当に、ろくでもないと思います。
象に載られても崩れない厚顔。その内側に隠されたのは、日本人の構成要素の最後のフロントラインである、恥の喪失。
それをやったら日本人じゃなくなる。
あ、彼らはアメリカ人だから、それで良いのか。
納得。