これまたフライング。まだ煉獄編の第13歌までしか読んでいません。これはさすがに一日やそこらで読めません。内容をざっと読むだけでも1日3時間読んで8日はかかると思う。つまり、実際ダンテが歩いた時間とほぼ同じだけ。それだけ良くできているともいえる。
で、何故先に書くかというと、これも間違いなく今でている神曲の訳の中でもっとも分かりやすい訳なのです。
神曲は、各時代の人が訳を作っており、時代が新しくなるごとになにが書いてあるのかが分かりやすくなってきています。そして、大抵の訳者が自分の訳を作るときに自分が得意な言葉からの訳と日本語訳を参照して書いていきます。何故このような作業が必要かというと、イタリア語は古語だからです。ぶっちゃけぼくも、英語の訳が横に書いてあるバージョンで無いと、すらすらイタリア語で朗読できません。
ちなみに森鴎外はドイツ語から読んだそうです。「即興詩人」の中で自分がいかにこの本を堪能しているかという話があり、その中で「神曲」という呼び名が初めて見られます。
そう、神曲、という題名をつけたのは森鴎外なのです。
そういえばドイツで自分の彼女のことを「いとしのベアトリーチェ」とか言っていたのは有名な話ですが、僕は常々何故ファウストのマルグレーテではなく神曲の、イタリアの作家の中のキャラクターにそのような憧憬があるのか常々不思議に思っていたのですが、ドイツにおける鴎外の愛読書は神曲だったのです。
で、非常に難しい、という印象があるこの作品の読み方。
まず、それぞれの歌の頭にあるあらすじ100歌分、一気に読みきる。それが第1日目。頭の中に世界の構造と道筋を作る。
はっきり言ってこれだけでも完全に頭に入っていればそれなりに読んだことになるのですが、後は平川訳をたどっていけば、イタリア語で一行も読まなくても何を書いてあるかが分かります。
僕がこの作品について強く言いたいことは、これはダンテが「コンメーディア」と名づけたとおり、やっぱりコメディーなんですよ。
ただ、あまりにもその技法が完成されていて芸術的なので、イタリア語で読むと圧倒されます。第5歌などそのまま歌になっている部分があるくらいです。本当に良くできています。
しかしよくよく読んでみると真に受けるにはあまりにもなところや、ダンテの人間としての不完全性を良く表している部分が多々見られ、頭の堅い人なりにこちらを笑わせようとしてくれているのが良く分かります。さすがイタリア人、サービス精神たっぷりです。
ヨーロッパの作品を読んでいると良く引っかかる「七つの大罪」について自分なりに考えてみたい人は、是非おススメ。七つの大罪なんて聞くと大げさですが「なーんだ、こんなことか!」と思えるようになります。ヨーロッパ人を理解したい人にもおススメ。彼らの精神構造の深い部分がかなり理解できるようになります。
一生付き合える本なので、何時間で読める、ということを書くのもあれですが。
所要時間:30時間で確実
お値段;3,800円