一日経っても余韻が強く残っている。やっぱり良い映画ですね。
この映画の良さを文であらわすのは無理かもしれない。今までもいくつかレビューを見たけれど、何か納得いかないというか。
この映画は二つの名ゼリフがあります。すなわち
Here's looking at you, kid.
日本語で言えば「君の瞳に乾杯」という、非常に大胆な訳の言葉と
Louis, I think this is the beginning of a beautiful friendship.
あえて訳すのならば「ルイ、ぼくはこれは美しい友情の始まりだと思うんだ」
「きみの瞳に乾杯」という言葉。
リックことハンフリー・ボガードはイルザことイングリッド・バーグマンに何度もこの言葉でささやきかけます。しかしもともとの意味は「君の事を見ているよ」という意味なので、この言葉が出てくるたびに「きみの瞳に乾杯」という訳をごり押しした昨日のNHKの関美冬さんは、ある意味とても頑固な翻訳者さんですね。
僕は嫌いでは無かったです。全面的に肯定は出来ないんだけどね。
勉強のために映画を見ている奇特な人もたくさんいるので、あの選択肢は仕方ないのでしょう。
問題はなぜこの「ルイ、ぼくはこれは美しい友情の始まりだと思うんだ」というセリフが名ゼリフのかというと。
この映画において2人の関係はあくまで利害関係から来る腐れ縁だったのが、フランスの解放という名の元において最後の最後に本当に美しい友情に変わったにもかかわらず、実際にそれをリックが口にすると、やっぱり「笑っちゃう」からなんですよね。
お前、人を殺しておいてそのセリフはどうよ、と。
そう思った瞬間、大戦の時代は映画の中でも繰り返されるように「この狂った世界」と人々が口にするような時代だったことが改めて思い出されて、起こった笑いが止まるのです。
で、よく考え直すとこの言葉はこの映画をすべて集約しているんだなあ、と気が付くんですよ。そしたらエンディングロールが来るんです。
映画は感動することも大事ですが、もっとも僕が重視する効果は「カタルシス」です。やっぱり「スカッと」しないと見た意味が無いんですよ。
これだけ重たい話題なのに最後に「それは無いだろ!」という結末でないにもかかわらずこっちの気持ちを爽やかにさせる。考えてみたら離れ業なのです。
大戦を扱った大抵の映画はこっちがすごい暗い気分になるか、時間返せ!という気分になるかどちらかなのだから。
いやー、やっぱり良い映画ですね。完成度の高い映画は一生心に残るものですが、これも間違いなくそのひとつだとぼくは思います。
ぼくは決して古きよき時代などという言葉は使わない。
この作品は大戦という狂気を乗り越えて傷ついた人たちの心を癒した金字塔だったのだから。
現代に示唆するメッセージに富んだ、すさまじい作品だと思います。