正確にはアニメ。
更に言うと原作はちょっと字の多い小説です。
小説は文体としては高校生向きぐらいか。ちょっと小難しいですが、大人でも世界観を受け入れれば読むことが出来ると思います。僕が立ち読みした印象はそんなところです。
普段はアニメを見ても全くこうした文を書く必要性を感じないのですが、「おー、このセリフを本以外で聞いたのは中学生のとき以来だよ」というセリフが非常に良い感じで挿入されていたので、思わず文を書きなぐっております。
「孤独は死に至る病じゃ」
言わずと知れたキルケゴールの言葉ですが、いわれてみるとなるほど、現代はこの言葉はすでに当てはまる段階に来ているのかもしれません。
昔師匠にいわれた言葉の中でもっとも一生に残っているものとして
「つまり俺たちは皆一匹狼だ」
という言葉です。
いえ、そのときには特に印象に残らなかったのですけれども、ここまで生きてきてこの言葉ってものすごく胸にしみるんですよね。別になりたいわけでもなく、そもそも種族として「一匹狼」。目の前の師匠にそんなこと言われたら、ねえ?
でも、実際、そうだったのです。
彼は別に特に誰を選んでいたというわけでもなく、つまり人間が自分のなしたいと思った事を成そうとした場合誰もが「一匹狼」である、ということを言っていたのですが。
狼は孤独な生き物だ。
いままでの歴史の中でもっとも飼いならされることの無かった種族を挙げよ、と言われたらやはりでてくるのは狼でしょう。
動物園にもいないのはつまり人気が無いからではなく、檻に飼う事ができないと言うことなんですよね。一人で生きることしか出来ない種族なのです。
しかし。
狼でも狼同士では群れる。その狼同士が会う手段を失ったときに、その狼は一体どうすればよいのか。
その答えが先にあるのかも分からず。
賢狼ホロは出生地の北の大地を目指す。それを助ける契約をするロレンス。
とりあえずいま港町ペッツィオ(まあこれがありえないぐらいフィレンツェとヴェネツィアをくっつけたような風景なんだな。街中はフィレンツェで海近くはヴェネツィア。合理性から考えると港町にああした地下道を作ることはありえない。そこら辺は恐らく作画した人たちは知らなかったのだろう。住まなきゃ分からないこともある。)のところまで一気に見ましたが、ファンタジーゆえに不合理なこともたくさんあることに目をつぶれば、物語としてはなかなか骨太に出来上がっています。
この作者に現実のヨーロッパの街でしばらく暮らせさせると、普通の作品も書けるようになると思う。まあ、3年ぐらい。文才はあるから、中途半端なファンタジーの世界に生きるのはちょっともったいないと感じる。
・・・でも、この辺をクロスオーバーしないあたり、今時なのかもしれません。一部の受けを強烈に狙うのが現代を生き延びる知恵のひとつなのかもしれない。
そこまで作者が考えている可能性は、当然ある。
質が高い故に、色々考えさせてくれる作品です。